親が認知症になると実家は売れない?「不動産の凍結」を防ぐために今できること【京都の不動産会社が解説】
- M.MIYA

- 6月3日
- 読了時間: 8分
「親が施設に入ったので、空いた実家を売って費用にあてたい」
——そう思って動き出したとき、初めて「親名義の家は、親の判断能力がないと売れない」という現実に直面する方が少なくありません。認知症によって不動産が「凍結」されてしまうと、売ることも貸すこともできなくなります。
この記事では、京都・中京区の不動産会社「六連コンサルティング」が、なぜ凍結が起きるのか、そして判断能力があるうちに何をしておくべきかを、不動産の視点からわかりやすく解説します。
この記事でわかること
認知症で不動産が「凍結」されるとは、具体的にどういう状態か
なぜ家族でも親名義の家を売れないのか(その理由)
凍結を防ぐために「元気なうちに」打てる主な対策
成年後見制度の現状と、2026年に動き出した制度見直しの概要

「親の家を売って施設費用に」——その時、家は動かせないかもしれない
高齢のご家族がいる方からのご相談で、近年とても多いのが次のようなケースです。
「父が施設に入った。誰も住まなくなった実家を売却して、その費用を施設代や介護費にあてたい」
ごく自然な考えですが、いざ売却を進めようとすると、不動産会社や司法書士からこう言われます。
「お父様ご本人の意思確認ができないと、この売買は進められません」
これが、認知症による「不動産の凍結」です。親名義の不動産は、たとえ同居の家族であっても、親本人に十分な判断能力がない状態では、原則として売却も賃貸も大規模な修繕契約もできなくなります。
そして厄介なのは、この問題が「いざ売ろう」と動き出して初めて発覚することです。気づいたときには、すでに対策の選択肢が大きく狭まっているのです。
なぜ家族でも売れないのか
「家族なんだから、代わりに手続きすればいいのでは」と思われるかもしれません。しかし、不動産の売買は、法律上「本人の意思」が必須の重い契約です。
不動産を売るということは、本人の大切な財産を手放す行為です。だからこそ、売買契約の場では、売主本人に「この家を、この価格で、この相手に売る」という意思と、その判断能力があることが求められます。司法書士は所有権移転登記の際に本人の意思を確認しますし、金融機関も本人確認を厳格に行います。
ここで認知症が進み、本人が契約内容を理解・判断できないと見なされると、契約そのものが成立しません。家族が「良かれと思って」代わりにサインしても、その契約は無効になり得ます。 親の財産を、子が勝手に動かすことはできない——これは本人を守るための仕組みでもあるのです。
凍結によって起きる具体的な不都合は、次のようなものです。
空き家になった実家を売却して、施設費用や介護費にあてられない
賃貸に出して家賃収入を得る、ということもできない
老朽化した家の大規模修繕やリフォーム契約も結べない
結果として、誰も使わない不動産の固定資産税や管理費だけが出ていく
京都市内でも、ご両親が施設に入られた後、中京区や近隣の実家が「動かせないまま」空き家として残ってしまうケースは珍しくありません。
凍結を防ぐ鍵は「判断能力があるうち」に動くこと
ここまで読んで「では、もう認知症が進んでしまったら手遅れなのか」と不安になった方もいるかもしれません。判断能力が低下した後の手段(後述する成年後見制度)もありますが、選択肢が限られ、時間も手間もかかります。
最も大切なのは、ご本人がお元気で、ご自身で判断できるうちに、将来に備えておくことです。代表的な備えを2つ紹介します。
なお、いずれも法的な手続きを伴うため、実際の利用にあたっては司法書士・弁護士などの専門家への相談が必要です。ここでは「どういう選択肢があるか」を不動産の視点から整理します。
① 任意後見制度
本人に十分な判断能力があるうちに、「将来、自分の判断能力が衰えたら、この人に財産管理などを任せる」とあらかじめ契約しておく制度です。誰に何を任せるかを自分で決められるのが特徴です。将来、判断能力が低下したときに、その契約に基づいて支援が始まります。
② 家族信託
本人(親)が、信頼できる家族(子など)に財産の管理・処分を託しておく仕組みです。たとえば「実家の管理・売却を子に託す」と設定しておけば、将来親の判断能力が低下しても、託された子が定められた範囲で実家を売却・活用できます。不動産の管理や売却を見据えた柔軟な設計がしやすい点で、近年注目されています。
どちらが適しているかは、ご家族の状況・財産の構成・将来の希望によって変わります。共通して言えるのは、いずれも「本人に判断能力があるうち」でなければ始められないということです。だからこそ、早めの検討が決定的に重要になります。
すでに判断能力が低下している場合:成年後見制度
「備える前に、すでに親の認知症が進んでしまった」という場合に使うのが、成年後見制度です。判断能力が不十分になった本人に代わって、家庭裁判所が選んだ後見人等が財産管理などを行う制度です。実家を売却する必要がある場合も、この制度を使えば道が開けることがあります。
ただし、現行の制度には次のような特徴・負担があることを知っておく必要があります。
利用にあたって家庭裁判所への申立てが必要で、手続きに時間がかかる
後見人には親族ではなく専門職(弁護士・司法書士など)が選ばれることもある
専門職が後見人になると、継続的な報酬(月額数万円程度が一般的)が発生する
居住用不動産の売却には、家庭裁判所の許可が別途必要になる
つまり、凍結後の「最後の手段」ではありますが、手間・時間・費用の面で負担が大きいのが実情です。だからこそ、「凍結が起きる前の備え」が望ましいと言えます。
【最新トピック】2026年、成年後見制度が見直しへ
この成年後見制度について、2026年に大きな見直しが動き出しました。記事の本筋である「今できること」とは時間軸が異なりますが、今後の参考として概要を紹介します。
2026年4月、政府は成年後見制度を見直す民法改正案を閣議決定し、国会に提出しました。主な見直しの方向性は次のとおりです。
「後見」「保佐」「補助」の3類型を「補助」に一本化する
一度始めると原則やめられなかった「終身制」を見直し、「実家の売却が終わるまで」など、期間や目的を限定して利用できる仕組みにする
実現すれば、「不動産の売却のためだけに、一時的に制度を使う」といった柔軟な利用がしやすくなると期待されています。
ただし注意点として、これはまだ「改正案」の段階で、施行は2028年度中になる見込みです。つまり、いま現在の認知症と不動産の問題には、当面は現行の制度が適用されます。「制度が変わるから待とう」ではなく、今直面している問題には今の制度で対応しつつ、根本的にはやはり早めの備えが大切という結論は変わりません。
※ 改正案の内容は今後の国会審議で変わる可能性があります。最新の状況は法務省などの公的情報をご確認ください。
参考: 法務省「成年後見制度の見直しに関する情報」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00304.html
厚生労働省「成年後見制度とは(制度の概要)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/seinenkouken/index.html
不動産の視点から、できる準備を一緒に考えます
認知症による不動産の凍結は、「気づいたときには遅い」という点で、1本目の記事でお伝えした生前贈与の話とも共通しています。財産の大きな部分を不動産が占めるご家庭ほど、この問題の影響は深刻です。
六連コンサルティングでは、公認 不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)が、「将来この不動産をどうしたいか」というご希望をうかがいながら、不動産の視点から備えの方向性を整理します。
任意後見や家族信託といった法的手続きそのものは、提携する司法書士・弁護士などの専門家と連携して進めますので、「まず何から考えればいいのか分からない」という段階でも安心してご相談ください。
特に、京都市中京区をはじめとした京都市を中心としたエリアで「親が元気なうちに実家のことを考えておきたい」「すでに空き家になっている実家をどうにかしたい」とお考えの方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
認知症で判断能力が低下すると、親名義の不動産は売却・賃貸・修繕契約ができなくなる(不動産の凍結)
家族であっても本人に代わって売買契約を結ぶことはできず、凍結は「いざ売ろう」としたときに発覚しがち
凍結を防ぐ鍵は、本人に判断能力があるうちの備え(任意後見・家族信託など)
すでに判断能力が低下している場合は成年後見制度があるが、手間・時間・費用の負担は大きい
2026年に成年後見制度の見直し(補助への一本化・終身制の見直し)が動き出したが、施行は2028年度中の見込み。今の問題には今の制度で備える必要がある
「うちの実家は大丈夫だろうか」と思ったら、できるだけ早い段階でご相談ください。
初回相談は無料です。
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※ 本記事は2026年6月時点の情報に基づく一般的な解説です。任意後見・家族信託・成年後見などの法的手続きに関する具体的なアドバイスは、司法書士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。当社は不動産の観点からのコンサルティングを行います。




